2025年1月に行われた交通工学研究会論文賞・技術賞選考小委員会において論文賞・技術賞候補が選定され、2025年3月18日開催の第4回理事会において決定いたしました。
第39回交通工学研究会論文賞
経路選択を考慮した強化学習による最適ネットワーク分散信号制御
桑原 雅夫、福田 和輝、 橋本 申、 田名部 淳、 吉岡 慶祐
交通工学論文集 第10 巻 第5 号
選考理由
本研究は、著者らが開発してきたマルチエージェント強化学習(MARL)を用いた分散型最適信号制御を対象に、瞬間の交通状況に反応して意思決定する経路選択への拡張を図るとともに、理論の精緻化を行い、さらには仮想ネットワークでの適用に限定されるものの、信号制御としての有用性検証に関する成果を取りまとめたものである。交通状態におけるマルコフ性の成立を前提とした場合、MARLによる分散型の信号制御により、ネットワーク全体の最適化が可能であることを明らかにしており、信号制御の今後の研究開発への示唆という点で、学術上ならびに実務上有用な研究と高く評価された。ゆえに、本研究は十分論文賞に相応しい論文であると判断した。
第28回交通工学研究会技術賞
刈谷放課後子育てMaaSプロジェクト
刈谷子どもの未来共創プラットフォーム
機関誌「交通工学」第59巻4号 報告に掲載
選考理由
子どもたちが習い事や地域活動等で外出する際、移動手段として親の自家用車送迎に依存するケースが全国的に多く見受けられる。親の送迎への依存は、時間、体力、費用面等の親側の負担とあわせ、子どもたちの活動選択肢の制限等、子どもの側の活動の自由度の面でも問題がある。
本報告では、小学校児童の習い事へ通う際の移動実態や親の送迎負担問題としての地域の実情を踏まえて、送迎タクシーによる移動手段の確保に加え、放課後教育拠点といった教育プログラムの場づくりをセットで取り組んだ実証実験の事例が示されている。これは移動(交通)+活動(教育の場)の共創の取組みといえ、実証実験段階ではあるが、児童、保護者、交通事業者および教育プログラム事業者にwin-winの関係をもたらす可能性を示唆している。交通問題解決のために、その背後にある活動と、MaaS等の技術も活用して連携・協力をはかっていくことが、ますます必要とされる今後の対応の方向と考えられ、子ども交通環境のあり方、保護者の生活の質の向上について考える上でも大変参考になる取組みである。ゆえに、十分技術賞に値するものと判断した。